一度にすべての条件を決めようとすると、気持ちがぶつかりやすくなります。次の順番で進めると、落ち着いて話し合えます。
1. 目的と金額のざっくり感を共有する
借りる側は、「何のためにお金が必要なのか」「いくら必要なのか」をまず正直に伝えます。貸す側は、自分が出せる上限を先に考えておきます。今すぐ用意できる額と、出したあとの家計や貯金への影響の両方から考えます。
この段階では、貸すかどうかの結論はまだ出さなくてかまいません。何に、いくら要るのかが見えないと、その先の条件を決められないからです。
2. 貸し借りか、援助(贈与)かを言葉にする
同じようにお金を渡しても、貸し借りか援助(贈与)かで、あとから残す書面も、税務上の説明も、ほかの親族への伝え方も変わります。
| 性質 | 大まかな意味 | 話し合いで確認すること |
|---|
| 貸し借り(金銭消費貸借) | 返す約束があるお金 | 金額、返済方法、期限、利息の有無 |
| 援助(贈与) | 返す約束がないお金 | 返さなくてよいと、双方が同じ言葉で確認すること。他の親族への説明の要否 |
「返せるときでいい」「出世払いで」といった口約束で返す時期を決めずにおくと、あとで貸し借りだったのか援助だったのかを説明しにくくなります。貸し借りにするのであれば、返す時期まで具体的に決めて話し合ってください。時期を決めておけば、家族の認識もそろいます。
援助にする場合は、「返さなくていい」と二人で言葉にして確かめてから渡します。
税務上、援助(贈与)と貸し借りのどちらに当たるかは、個別の事情で判断されます。国税庁は、「ある時払いの催促なし」や「出世払い」のような貸し借りについて、借りたお金そのものが贈与として取り扱われる、と説明しています(国税庁タックスアンサーNo.4420)。国税庁は、返済能力や返済状況からみて本当の貸し借りと認められる場合には、借りたお金そのものは贈与にならない、とも説明しています。動く金額が大きい場合や、判断に迷う場合は、事前に税理士へご確認ください。住宅取得等資金の贈与税非課税特例を使いたい場合も同じです(親や祖父母など直系尊属からの、令和8年12月31日までの贈与が対象の制度です)。このページで扱うのは、家族の間で受け止め方をそろえるところまでです。
3. 返し方と期限を具体化する(貸し借りにする場合)
貸し借りとして進める場合は、次の項目について、数字と日付が決まるところまで話します。
- 元本の金額(1円単位まで決める)
- 返済方法(一括返済か、分割返済か)
- 返済期日(いつまでに完済するか/毎月何日に、いくら返済するか)
- 渡し方と返し方の記録(銀行振込なら振込先口座。現金手渡しなら、渡したときと返したときの受領記録や領収書)
- 利息の有無(無利息か、利息を付けるか。付ける場合は年利率)
「生活に余裕ができたら返す」では、いつ返すのかがお互いに食い違ったままで、書面にも書けません。その場ですぐに数字が決まらないときは、「来週の〇曜日にもう一度話し合う」のように、次に話す日だけ決めて一旦区切ってもかまいません。
利率の決め方や、無利息にした場合の贈与税との関係については、別ガイド「家族間の借用書のひな形と書き方」で説明しています。
4. 返せなくなったときの扱いを、争いになる前に確認する
ここで取り上げるのは、万が一に備えてあらかじめ合意しておく条件です。すでに返済が滞っている相手への督促や取り立ての方法ではありません。
話し合っておくと安心な項目の例は以下のとおりです。
- 病気や失業などで予定どおり返せなくなったとき、まず何をするか(すぐに連絡を入れる、返済計画を見直す話し合いの場を設ける、など)
- 分割返済の遅れが続いたとき、残りのお金をどう扱うか(再度話し合って返済計画を見直す/一定の条件を満たした時点で一括返済を求める、など)
- 保証人を立てるか、立てないか
条文にする作業は、書面を作る段階で行います。すでに返済が滞っている場合や、条件で意見が対立している場合の法的な請求・代理交渉は、行政書士はお引き受けできません。その際は弁護士へご相談ください。
5. 他の家族への伝え方を決める(必要な場合)
親子や兄弟姉妹のお金の話は、本人たち以外の家族(配偶者や、相続人になる家族)の気持ちにも関わります。「誰に、いつ、どこまで話すのか」「話さないなら、その理由は何か」も、できればこの場で確認しておきましょう。法律上の義務ではありませんが、あとで事実を知った家族が不信感を持ちやすいからです。
6. 合意した内容をメモし、書面化の段取りを決める
口頭での「だいたい分かった」で済ませず、必ずメモ(日付・金額・返し方・期限など)を残してください。あわせて、いつまでに書面にするのか、どちらが下書きを用意するのかも決めておきます。そのメモをもとに、次のガイドを参考にして正式な借用書にしていきます。